家族の時間。
1か月ぶりに見る景色は昨日まで見ていた景色だと思えるような感覚だった。ママは家に近づくにつれ嬉しそうに歌う。ぼくも一緒に歌う。
家に入るとパパが笑顔でいてくれた。パパの髪型が変わっていて衝撃だった。妹はまだ寝てた。ママと部屋まで行って一緒に起こした。妹は寝ぼけながら、ママにしがみついていた。
久しぶりに4人で過ごした日、離れていた時間のことをみんなで話す。なんかこのガヤガヤした感じがいい。妹とは普段はケンカばかりだけど、ぼくの部屋でユーチューブの動画の話をしながら2人で過ごした。だんだん、日常に戻っていく。このまま「普通」でいたい。
近所の友達がポストにいれてくれていたプリントがたくさん。担任の先生も通信表を届けてくれていた。2学期学校に行ってなかったので、オール1も覚悟してたけど、評価なしで斜線がひいてあった。もし1が並んでいたらひどいダメージだったと思う。3学期頑張ろう。宿題もやって行かないと。
豊富温泉 〜最後の砦〜
アトピーのぼくが出会った豊富温泉は、ぼくの肌をいい状態にして元気をくれました。大きな自然の力に圧倒され、感動、尊敬、感謝。言葉では言い表せないほどの力をくれました。豊富温泉はすごいパワーを持った温泉です。そしてそこに集まる人もパワーを持った人たちが集まっていました。北海道のてっぺんまで来るんだから、きっとたくさんのエネルギーを使うはず。そのエネルギーを費やしてでもここへ集まって来る人達。すごいパワーを持った豊富温泉だからこそ、たくさんの人達が集まるんだと感じました。27日間の滞在で得たものはぼくの宝物です。アトピーで苦しんでいる人が豊富温泉に出会って、少しでも肌の状態が良くなったり気持ちが楽になれますように。
*ぼくの肌に豊富温泉は合いましたが、中には合わない人もいるそうです。
豊富温泉
豊富温泉は全国的にも珍しい油分を含んだ石油臭のする温泉。1926年(大正15年)石油採掘中に天然ガスと共に温泉が噴出した。
泉質は弱アルカリ性で、重曹・ホウ素(殺菌効果)、タール(抗炎症作用)、メタホウ酸(消毒効果)、マグネシウム(炎症鎮静効果)、メタケイ酸(美肌効果)が含まれていて乾癬やアトピーに効果がある。
1990年代には乾癬の患者から注目が集まり、2000年代以降アトピーの患者が全国から湯治に訪れている。
入浴施設
ふれあいセンター
<入浴> 8:30~21:00 受付は20:30まで
<入浴料> 大人510円 子ども250円 65歳以上380円 小学生未満無料
<TEL> 0162-82-1777
<HP> 豊富町
ニュー温泉閣ホテル
<入浴> 11:00~22:00
<入浴料> 大人500円 子ども300円 小学生未満無料
<TEL> 0162-82-1243
<HP> ニュー温泉閣ホテル
ホテル豊富
<入浴> 11:00~21:00
<入浴料> 大人500円 子ども250円 小学生未満無料
<TEL> 0162-82-1055
<HP> ホテル豊富
川島旅館
<入浴> 10:30~22:00
<入浴料> 大人800円 子ども400円 小学生未満無料
<TEL> 0162-82-1248
<HP> 川島旅館
宿泊施設
〜豊富温泉街〜
・川島旅館
・ホテルウィン(ウィクリーマンション型)
・湯の花荘(シェアハウス)
・湯快宿(保養宿泊所)
・シェアハウス「YADO」
・ウカスイモシリ(シェアハウス)*2019年4月オープン予定
〜豊富市街地〜
・ヤドカリハウス(シェアハウス&ビジネスホテル)
・ロッジメント宮本(食事付きアパート)
・stayわが家(女性限定移住体験ホーム)
・トーヨーホテル
・松屋旅館
・あしたの城(市街地から少し外れた場所)*2019年1月7日〜1月31日まで「北海道ふっこう割」の対象施設。
湯治
湯治については、豊富温泉のホームページ「ミライノトウジ」に詳しく載っています。
湯治経験者の体験談、研究者の解説、豊富周辺のガイドなどが載っている本もあります。
北海道最終日
顔の痒みは変わらず。ずっとなくなっていた顔の落屑が少しある。頭も少し痒い。他は順調。
昨日は美瑛のアルプロッジに泊まった。ママが3日前に見つけたこの宿。家族旅行では行かないようなシンプルでアットホームな雰囲気だった。部屋にはテレビがなくて、トイレとお風呂は共同。こういう所はパパが嫌がるから来れないとママが言っていた。
夜ご飯食べた後には美瑛の青い池に行った。夜だし、雪道を行くのは反対だったぼく。絶対事故らないとママと約束して行くことにした。夜はライトアップされていて、池に映る影がいい。
朝、除雪機で雪かきするオーナーさんの姿。お客さんを見送る明るい声。窓の外の真っ白な世界。鋭く尖ったつらら。美味しいご飯。また来たいと思った。
夜フェリーに乗り、明日には家に着く。まずやる事は、1か月前まで横になっていたソファへ飛び込むこと。ママはコタツに入ってコタツガメラになりたいと言ってた。明日は大晦日。いい1年の締めくくりにしたい。
豊富温泉 27日目
顔の状態は変わらず痒い。他はいい状態。
朝イチの湯治は初めてだった。油の量が多くて体中ぬるぬる。ちょっと気持ち悪くてシャワー浴びて上がった。これでぼくの湯治が終わった。
豊富温泉に来て、肌が良くなって体力も戻って体重も増えた。辛い時が思い出せないくらい普通になれた。夜眠れる、狂うほど痒くならない、傷が治って歩ける、関節が伸ばせる、服を裏返しで着なくてもいい、朝シーツに付いた血を見なくなった。普通が嬉しかった。
今日は7時間半の移動で北海道の真ん中まで来た。美瑛ってところに泊まる。ママの運転はあいかわらず怖い。40キロで走るママ。後ろに車がいると焦るらしく、落ちつかないママに「事故るより、ゆっくりの方がいいよ」と何度も言うぼく。何度もお店の駐車場に入ったりして後ろの車を先にいかせる。途中でビュンビュン追い抜いていく車もいて、北海道の人はすごいと思った。どんなテクニックがあればあんなに早く走れるのか。ネットで調べたけど、答えは書いてなかった。ママは背中と頭が痛いと言っていた。明日も長時間の移動。とにかく早く寝よう。
豊富温泉 26日目
顔の痒みと傷とガサガサ。原因を探る。肌が良くなっていたから、食べ物で気を抜いてしまった。調子乗ってサプリを飲まない日が続いた。海外から取り寄せているサプリを切らしてしまった。だからじゃないかと考える。正解は分からないけど、とりあえず出来ることはしないと。
昼間はふれあいセンター2階のコンシェルジュへ行って、帰った後の生活について話してきた。帰ってから肌の状態がどうなるのかを考えると不安になってしまうけど。「心配しても、心配しなくても、アトピーが出るときは出るんだし」と言われ気持ちが楽になった。今まで通り食べ物に気をつけて、生活習慣を整える。
豊富で過ごす最後の夜。夕飯はふれあいセンターの味彩でジンニスカンを食べた。やっぱり柔らかくて美味しい。このタレも好き。タレだけでご飯食べれそうな気がする。
夜の湯治の帰り道は気温はマイナス5度だったけど、雪の上に寝転んでみたり、ぽっけの駐車場の真っ白な雪に大きな絵かいたり。「寒い〜!」「トイレ行きたい」「早く部屋戻ろう」と言いながらも2人でゆっくり散歩しながら帰ってきた。部屋では荷造りしたり、過去の自分の写真を見返した。
明日の朝湯治をしたら豊富を離れます。
豊富温泉 25日目
顔が痒いし、傷が出来て、がさがさ。他はいい状態が続いている。
ふれあいセンターの点検日のため、川島旅館の温泉に初めて入る。まず玄関入って清潔さに感動。けっこう潔癖症のぼく。脱衣所もお風呂も綺麗で、何故今まで川島に行かなかったのか。それに誰もいない時間で1人で入れたのも良かった。温泉の他に冷泉と露天風呂があって、のぼせやすいぼくにとっては最高の場所だった。
久しぶりに頭を洗った。豊富に来てから温泉のお湯をかけて頭の汚れを流していたけど、久しぶりにシャンプーをつけて洗った。ひどい状態で傷がある時はしみるし浸出液や血が固まって洗うことが苦痛で避けたくなるシャンプー。今日は大丈夫だった。川島旅館に行けて良かった。
豊富温泉 24日目
顔が痒い。傷も増えてきている。良くなっていたのになんでだろう?と毎日考えてしまう。このストレスでまた痒くなってしまうんだろうな。
顔を叩くことも止められずにいるぼく。前のようにバチンバチンと叩くことはなくなったけど、パチパチ叩く癖がついてしまった。
前は痒みがある時に叩くだけだったけど。いつからか顔が痒くなくても叩くようになってしまった。自分で自分の顔を叩くことを止められない。
外にいるときや、何かに夢中になっているときは叩かないですむけど、部屋にいるといつのまにか叩くぼく。ママは顔パチしているとぼくの名前を呼んだり、ご飯の準備手伝ってと言ってくる。本当に痒いときはご飯の準備は無理だけど叩くのが癖のときは、何かをしていると顔パチはしないから。だからママはぼくに顔パチをさせない為に手伝ってと言っているんだと思う。
顔を見られるのがイヤなぼく。ぼくが友達に必要とされていくのかわからない。こんなアトピー顔で誰かと話したり、人見知りのぼくが仕事したり出来るんだろうか。そういうのが叩く理由なんだと思う。気持ちと体って繋がってると気づいた。
豊富温泉 22日目
朝まで起きずによく眠れているが、寝付くまでがかゆい。顔と首の痒みが続く。顔にニキビの後のようなボツボツが出来そうな感じで肌がデコボコしている。おさるのおもちゃのようにまた叩き過ぎたかも。叩く癖はまだ抜けていない。夢中で顔を叩いてしまっている。痒いから叩くのか、叩くことが癖になっているのか自分でも分からない。
普段なら街を歩けば、クリスマスの飾りや音楽が流れて。クリスマスを感じたくなくてもクリスマスを押しつけられる。
ここでは、派手な飾りも聞こえてくる音楽もない。何もないから、いつもは遠ざけているクリスマスに今年は自分から少し近づきたくなった。
ピザを食べ、可愛いクッキーを食べ、テレビの歌番組を見て。こんなクリスマスも悪くない。
豊富温泉 21日目
夜はぐっすり眠れる。顔と首が痒くていつもより掻いてしまった。出血あり。温泉は沁みなかったけど、保湿のクリームがしみる。湯治は初めて3回行けた。午前、午後、夜。少しでもいい状態で帰りたい。
ママの体調が悪くて、昼は2人でふれあいセンターの味彩に行った。ママはジンギスカンのライス付き、優柔不断のぼくは迷って迷って醤油ラーメンとママのジンニスカンを少しもらうことにした。前回食べたエゾシカのジンニスカンも美味しかったけど、ぼくの好みは普通のジンニスカン。帰る前にまた食べようとママと約束した。
あと、前に行きそびれた誠鮨にも行きたいし、予約で満席だった旬花にも行きたい。レティエのピザパンが忘れられないからそれも食べたい。
帰り道は旭川と苫小牧に寄ると言ってたから、美味しい塩ラーメンも食べたいし。海鮮丼も食べたい。美味しいお店あるといいな。
豊富温泉 20日目
顔と首の痒みが続く。掻きすぎてすこし出血。顔にニキビが出来そうな感じもする。肌がボコボコしている。
朝から湯治して温泉に3回行く予定でいたが、朝は体がだるくて2回になってしまった。明日は3回行きたいな。
夕方、ママがいつものひらめきが降りて来たようで。1週間帰るの延期しない?帰っても冬休みだし家で何もする事ないなら、ここで湯治してた方がいいんじゃないかな?もし1週間追加するなら、キャンセルしたり延期したり色々あるから早めに決めたい。というママ。
でたー。急なひらめき。ま、いつものことだからいいけど。さてどうしようかと悩むぼく。確かに帰ってもすることないし延期しようかな。んーでもパパと年越し忘年会しようって約束したし。決められない優柔不断なぼくは頭ん中でぐるぐる考えた。そしてぼくは決めた。
またここに来ることになるんだったら延期しないで帰ると伝えた。すごく何か言いたそうなママだったけど、結局予定通り帰ることになった。
豊富温泉 19日目
気になっていた頭の傷が治り始めた。まだ頭と顔と首の痒みは少しある。顔をパチパチと叩くクセがおさまらない。
稚内まで出かけた。今回はお土産の買い物と大学の見学と日本のてっぺん宗谷岬が目的。稚内のお店でお土産をカゴいっぱい買った。大学の見学は、直前になってどうしても行きたくなくなり、ストレスで痒くて痒くて久しぶりに夢中で掻いた。ママはぼくに一歩踏み出して欲しいという。痒みがおさまるのを待って、ママがさあ行こうという。動かないぼくを見てママは諦めて1人で大学へ入って行った。逃げてるつもりはないけど逃げてるようにみえるんだと思う。でももしかしたら、逃げてないふりして逃げているのかもしれない。
戻って来たママはぼくに大学の中を見せたかった、案内してくれた事務局の人に会って欲しかったと言っていた。その人もアトピーで湯治経験者だったらしい。自分の経験を話してくれたことにママは感動していた。その話しをぼくにも聞かせたかったんだと思う。事務局の人は大学内の話しもたくさん説明してくれたらしく、それを興奮ぎみで話すママ。大学の話しが終わると、色んな選択肢があることを教えてくれた。また1つ不安が少しだけ減った。
宗谷岬は、いるだけでパワーをもらった。すごい景色だった。間宮林蔵からも樺太からもパワーをもらってきた。明日からまた頑張ろう。
部屋に帰ってからママが疲れたというので、始めてうどんを作った。意外と美味しくできた。出来ることが増えるのが楽しい。
豊富温泉 17日目
首の痒みでなかなか眠れなかった。パン食べたからかな。やっぱり小麦粉は要注意。だけど食べたくなるんだよな。ここでは食べても痒くなるだけだけど、帰ったら肌に出るだろうな。
パパと久しぶりに話した。久しぶりだな!調子どうだ?とか普通の会話だったけど、少し照れくさかった。妹とも話した。最近パパやじいちゃんばあちゃんに甘やかされてお菓子食べ放題で、太ったらしい。
妹に「痩せろよ!」と言うと「太れよ!」と返された。うん確かにそうだ。もう少し太って体力もつけたい。念押しでもう一度言ってみた。ぼく「痩せろよ!」妹「太れよ」。ママも参戦して妹に「痩せろよ!」と言うと「ママも痩せろよ!」と返されていた。ママは痛いとこ突かれた様子で何も言えずに悔しがっていた。その様子を見てぼくは笑った。久しぶりの家族の会話楽しかった。